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プロフィール

香川 幸太郎
博士(理学)
スイス連邦水圏科学技術研究所(EAWAG)生態・進化・生化学センター ポスドク


研究の概要

「多種多様な生物がどのように進化してきたのか?」という疑問に答えるために、コンピューター・ シミュレーションと数理モデルを使って研究しています


送粉共生系における多様性の進化

植物と送粉動物の共生系は、多様性に富む生物系の代表格です。送粉系における多様性が進化したメカニズムに迫るために、2つのテーマで研究を行っています:

(1)送粉者の捕食者が、送粉系の多様化に果たす役割
よく花の上で訪花昆虫を待ち伏せしているクモなどの捕食者を見かけます。また、イチジクとイチジクコバチによる「絶対送粉共生系」では、コバチに寄生するハチや、花粉媒介を行わずにイチジクに寄生するコバチが普遍的に存在します。このような送粉共生系の「邪魔者」は、花と送粉者の進化にどのように影響するのでしょうか?コンピューター・シミュレーションを行った結果、送粉者の捕食者の存在は、植物・送粉者・捕食者の大規模な共進化を引き起こす引き金となることがわかりました。また、このような大規模な共進化が起きることで、植物と送粉者の新しい種の創出が促進されることが示唆されました

(2)無報酬花における離散的な色彩多型の進化メカニズム

ふつう、植物と送粉者は、互いに利益がある相利共生の関係にあります。しかし、植物の中には送粉者に報酬の花蜜を与えず、送粉者を騙して利用する「無報酬花」をつけるものがあります。このような無報酬花のいくつかの種で、同種内で何色かの花色が共存する、色彩多型現象が知られています。このような色彩多型はなぜ進化したのでしょうか?また、進化する花色の数はどのように決まるのでしょうか?この疑問に答えるため、個体ベース・モデルを用いて、無報酬花の花色進化をシミュレーションしました。


適応放散における雑種形成の役割

近年、異なる系統同士の雑種形成が別系統由来の遺伝子が混ざった多様性に富む集団を生み出し、適応放散を促進するという仮説が注目を集めています。しかし、雑種形成はいつも多様性の進化を促進するわけではなく、時には既に存在する種の融合や絶滅を引き起こすこともあります。我々は、コンピューター・シミュレーションを使って、次の二つの疑問に取り組みました:(1)雑種形成が本当に種多様化を促進するのか?(2)それにはどのような条件が必要なのか?別の場所で進化した2つの系統が雑種形成し、雑種集団が新しい生態学的ニッチへと適応放散する状況をシミュレーションしました。その結果、雑種形成が適応放散を促進しうることが確認されました。特に、新たなニッチが互いに大きく異なっており、突然変異だけではニッチ間の適応度の谷を越えることが難しい場合に、雑種形成が適応放散にとって不可欠なファクターになりうることが示唆されました。また、雑種形成による適応放散の促進は、二つの親系統間の遺伝的分化度が中程度の場合に最も顕著となることが示唆されました。

研究業績

論文

Kagawa, K., Takimoto, G. 2014. Predation on pollinators promotes co-evolutionary divergence in plant-pollinator mutualisms. American Naturalist 183: 229-242.


Takahashi, Y., Kagawa, K., Svensson, E. I., Kawata, M. 2014. Evolution of increased phenotypic diversity enhances population performance by reducing sexual harassment in damselflies. Nature Communications 5: 4468.


Kagawa, K., Takimoto, G. 2016. Inaccurate color discrimination by pollinators promotes evolution of discrete color polymorphism in food-deceptive flowers. American Naturalist 187: 194-204.


Kagawa, K., Takimoto, G. 2017. Hybridization can promote adaptive radiation by means of transgressive segregation. Ecology Letters accepted.


シンポジウム企画
香川 幸太郎,瀧本 岳. 2012. 新規形質はどのように出現するのか?数理モデルから得られた新たな洞察. 第28回個体群生態学会大会,S4, 船橋.


鈴木 美季, 香川 幸太郎. 2014. 動物の認知行動から植物の進化を理解する ~植物生態学と動物行動学の共進化をめざして~ 第61回日本生態学会大会,W03,広島.



学会発表(査読あり)

Kagawa, K. 2012. Why are rewardless flowers divers? A simulation study. The 97th Annual Meeting of Ecological Society of America, PS102-168, Portland, Oregon, US.

Kagawa, K. , Takimoto, G.2017. Inaccurate Color Discrimination by Pollinators Promotes Evolution of Discrete Color Polymorphism in Food-Deceptive Flowers. XIX International Botanical Congress, T2-07-06, Shenzhen, China.


学会発表(査読なし)

香川 幸太郎,瀧本 岳. 2010. 非対称な食物網は進化的にも安定か? 第57回日本生態学会大会,P2-077,東京.

香川 幸太郎,瀧本 岳. 2011. 送粉相互作用を介した同所的種分化の理論的可能性. 第58回日本生態学会大会,P2-291, 札幌.

Kagawa, K. , Takimoto, G. 2012. Why rewardless flowers are diverse? 第5回東アジア生態学会連合大会, P2-140A, 大津.

香川 幸太郎. 2012. 無報酬花の色彩多型はなぜ進化したのか?~シミュレーションによる研究~. 第28回個体群生態学会大会,S4-3,船橋.


香川 幸太郎,瀧本 岳. 2014. 適応放散する系統の特徴を探る~雑種形成と性選択の役割~. 第61回日本生態学会大会,PA2-010, 広島.


Kagawa, K. , Takimoto, G.2015. Roles of hybridization and magic traits in adaptive radiations. 第62回日本生態学会, I1-25, 鹿児島.


Kagawa, K. 2016. Under what conditions does hybridization promote adaptive radiation? ANU-UC-ISM Joint Symposium on Environmental Statistics 2016, Canberra, Australia.



連絡先

  • Kotaro Kagawa
  • Eawag Seestrasse 79, 6047, Kastanienbaum, Switzerland
  • Email: kagawakoutarou(at mark)gmail.com